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第七十五話 雨のバリ島と胸に落ちる小さな痛み

Author: marimo
last update Last Updated: 2025-12-17 08:33:28

翌朝――

 玲が目を開けたのは、カーテン越しに薄い白光が差し込むころだった。

 枕元の時計を見ると、もう十一時を過ぎている。

(……寝過ごした)

 起き上がると、静かな雨音が耳に落ちてきた。

 昨日までの陽射しが嘘のように、空は重たく濁り、湿った風がガラス越しに肌を撫でる。

「玲……? 起きた?」

 隣のベッドで丸まっていた麻美が、寝ぼけた声で顔を上げた。

 髪が少し乱れていて、頬はほんのり赤い。

「もうお昼じゃん……」

「そうみたいだね。昨日、遅かったから……」

 麻美はゆっくり起き上がり、大きく伸びをした。

「ふわぁ……昨日ね、大地くんが――」

 にやりと笑う。

 玲は思わず苦笑した。

「そんな顔しないでよ。楽しかったんだから。あたしさ……もう決めた!」

「……何を?」

「日本に帰るまでに、大地くんを絶対モノにする!」

 勢いよく宣言する麻美の声は、雨模様の朝でも明るかった。

「玲もさぁ……瑛斗くんと楽しんじゃえば? 蓮のことなんて忘れてさ」

 玲は小さく首を振る。

 けれど、その動きはどこか弱々しかった。

「……そういうんじゃないの。瑛斗くんとは」

「ほんとにぃ?」

「ほんと」

「つまんなーい」

 麻美はそう言いながらも、どこか安心したように笑った。

 玲もつられて微笑む。

 昼近くだったので、二人はホテルのレストランで軽いランチを取ることにした。

 窓の外では、ヤシの葉がしっとりと濡れ、灰色の空が映り込んでいる。

 旅行客たちも遅めの朝食をとっており、店内は緩やかなざわめきが広がっていた。

「玲、これ美味しいよ」

 麻美がトロピカルサラダをつつきながら言う。

 玲はうん、と微笑んで返したが――心はどこか遠かった。

(蓮……もう、会えないのかもしれない)

 心の奥で冷たい影が疼く。

 食事を終えると、麻美は椅子を蹴るように立ち上がり、晴れ晴れとした顔になった。

「よし! 買い物行ってくる! 大地くん誘ってくるね!」

「うん、いってらっしゃい」

「玲も後で来なよ〜? スパとか寄っちゃえば? 気分晴れるって!」

 そう言い残し、麻美は軽い足取りでレストランを出て行った。

 玲は一人、少しだけ取り残された気分で座り続けた。

(……どうやって気分なんて晴れるんだろう)

 窓の外、濡れた海が静かに揺れていた。

 部屋に戻った玲は、ベ
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